徳富蘇峰―日本ナショナリズムの軌跡
米原 謙

定価: ¥ 819
販売価格: ¥ 819
おすすめ度:
発売元: 中央公論新社
日本知識人の「便宜主義」の起源
著者は明治日本から昭和日本への国家としての変貌と、蘇峰の生涯を重ね合わせることで、近代日本のナショナリズムの軌跡をたどった。確かにたどったのだが、何故あの輝かしき「青春の明治」が、1945年の日本の廃墟に至ってしまったのかは、少なくとも私にはこの書からその理由を詳らかにできなかった。
おそらく、文中にある(p.71)、陸羯南の「原理主義」と蘇峰の「便宜主義(オポチュニズム)」の対照性の指摘が、一つの鍵になると憶測するのだが、著者はその点を敷衍して論じてはいない。蘇峰の残した山のような著書に目を通し、それらと生涯を対応させるという作業だけでも、莫大な知的エネルギーの投入を免れないことは理解できる。
どう変わったかは了解した。ただ、私が知りたかったのはその先であった。残念な書である。
日本ナショナリズムの体現者
徳富蘇峰は、名前こそ比較的有名なものの、福沢諭吉や中江兆民・吉野作造・石橋湛山に比べれば、日本政治思想研究において顧みられることが少ない人物である。
それは、著者が「反故」と形容する、一五年戦争下の国家に没入しきった蘇峰自身の言動に大きな原因があるが、蘇峰ははじめからそのようなずぶずぶの国家主義に染まっていたわけではない。その思想の遍歴をたどると、近代日本のナショナリズムの軌跡が浮かび上がってくる。本書は、徳富蘇峰というかつての青年思想家がいかなる転回を遂げたかという点に焦点を絞りつつ、近代日本そのもののありようをも視野に入れて論じている。日本政治思想史の碩学の手になる好著である。
日本のナショナリズムの体現者
この本の主役徳富蘇峰に限らず明治期に生まれた思想家・言論人には、論壇デビュー当初は洋学を基盤にした啓蒙主義的な言説を語り、明治後半に至って帝国主義・国粋主義的な思想に転向するといったケースが少なくありません。従来の教科書では、こうした変化を思想的偏狭化・堕落と捉える傾向にありました。しかし、本書においては幕末以来の明治ナショナリズムと、後の昭和ナショナリズムとの内的な連関を丹念に探求し、前者=善・後者=悪という単純な二元論の克服を目指しています。
前者から後者への移行が必然だったか否かは、私にはわかりません。それでも、本書に示されている移行の過程は極めて自然です。そして、追い越す対象であった西洋から「文明」を摂取せざるをえなかった日本の悲愴さと、その悲しさを体現した大言論人「徳富蘇峰」を描ききっていると思います。
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おそらく、文中にある(p.71)、陸羯南の「原理主義」と蘇峰の「便宜主義(オポチュニズム)」の対照性の指摘が、一つの鍵になると憶測するのだが、著者はその点を敷衍して論じてはいない。蘇峰の残した山のような著書に目を通し、それらと生涯を対応させるという作業だけでも、莫大な知的エネルギーの投入を免れないことは理解できる。
どう変わったかは了解した。ただ、私が知りたかったのはその先であった。残念な書である。
日本ナショナリズムの体現者徳富蘇峰は、名前こそ比較的有名なものの、福沢諭吉や中江兆民・吉野作造・石橋湛山に比べれば、日本政治思想研究において顧みられることが少ない人物である。
それは、著者が「反故」と形容する、一五年戦争下の国家に没入しきった蘇峰自身の言動に大きな原因があるが、蘇峰ははじめからそのようなずぶずぶの国家主義に染まっていたわけではない。その思想の遍歴をたどると、近代日本のナショナリズムの軌跡が浮かび上がってくる。本書は、徳富蘇峰というかつての青年思想家がいかなる転回を遂げたかという点に焦点を絞りつつ、近代日本そのもののありようをも視野に入れて論じている。日本政治思想史の碩学の手になる好著である。
日本のナショナリズムの体現者この本の主役徳富蘇峰に限らず明治期に生まれた思想家・言論人には、論壇デビュー当初は洋学を基盤にした啓蒙主義的な言説を語り、明治後半に至って帝国主義・国粋主義的な思想に転向するといったケースが少なくありません。従来の教科書では、こうした変化を思想的偏狭化・堕落と捉える傾向にありました。しかし、本書においては幕末以来の明治ナショナリズムと、後の昭和ナショナリズムとの内的な連関を丹念に探求し、前者=善・後者=悪という単純な二元論の克服を目指しています。
前者から後者への移行が必然だったか否かは、私にはわかりません。それでも、本書に示されている移行の過程は極めて自然です。そして、追い越す対象であった西洋から「文明」を摂取せざるをえなかった日本の悲愴さと、その悲しさを体現した大言論人「徳富蘇峰」を描ききっていると思います。
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